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生活の中のユニバーサルデザイン

第16回 生活とユニバーサルデザイン

入浴という行為は、どこから始まるのでしょうか?浴室内に入ったときからでしょうか?それとも、服を脱ぎはじめたときからでしょうか?実は「お風呂に入ろう」と思った瞬間から、入浴行為は始まっているのです。今回はこれまでのセミナーのまとめとして、生活行為という観点から3つの商品を軸にユニバーサルデザインについて考えてみたいと思います。

3.手すり再考

写真2 フリースタイル手すり

住まいのユニバーサルデザインを実現するには、やはり手すりが欠かせないでしょう。

手すりは生活に伴う移動を幅広く支援します。

一般住宅のトイレや浴室などに手すりを取り付ける案がはじめて提出されたのは、以前お話した通産省の新住宅開発プロジェクト(1981年)で実験モデル住宅を建設したときでした。その後20数年を経て、今ではトイレ・浴室には標準で手すりが設置されるのが"あたりまえ"になりました。しかし、廊下などの通路に手すりを取り付けているお宅はまだまだ少なく"あたりまえ"であるとはいえない状況です。わたしたちは、普段移動する際、何気なく椅子の背もたれ、テーブルの端、洗面であれば洗濯機、などなど、移動経路上にあるさまざまなものを掴み・支えにしています。しかし、これらは体を支える上では不安全な場合もあり、時として転倒事故なども発生してしまいます。誰もが快適に生活するために安全な動線を確保すること、つまり"転ばぬ先の杖"として手すりを設置することが望ましいのです。そして、手すりは決して高齢者のためだけの福祉用具ではなく、ユニバーサルデザイン商品です。

手すりというとすぐに「径32Φ丸棒」をイメージしてしまいますが、こうした手すりにはデザイン的魅力がないために、なかなか一般に浸透していかないのだと思います。しかし、住宅インテリアとして魅力的なデザインにすれば、はじめから積極的に設置されるものになると思います。

以前、手すりについてお話したとき(第5回)にも触れましたが、「手すりを取り付けられるように準備しておく」のではなく、安全確保のためにも「はじめから取り付けておく」という考え方を定着させる必要があると思います。そのためには住宅マニュアルや指針に捕らわれすぎるのではなく、自由な発想で手すりを考えてみることも必要なのではないでしょうか。

4.シャワーチェアはユニバーサルデザイン

写真3 シャワーチェア

手すりもそうですが、ユニバーサルデザインとして進化していく可能性を持ったものは、まだまだたくさん有ります。そのなかでも代表的なのが、シャワーチェアでしょう。

現在シャワーチェアは、TOTOをはじめとしてさまざまなメーカーから「介護用品・福祉用具」として販売されています。しかし、シャワーチェアは福祉用具ではない、と考えています。フローピアの回で、浴用イスを使用した方が身体に負担がかからないという事をお話しましたが、浴室での洗体行為などを考えると、イスに座った方が楽ですし、また動作の安全を確保することにもなります。浴室スペースの狭さがイスの設置を拒んでいることは理解できますが、イスに座った行為を基準にしてスペースが考えられたとき、シャワーチェアが介護用品・福祉用具という垣根を越えてユニバーサルデザインへと進化していくのかもしれません。もしオシャレなシャワーチェアが商品化されれば、この進化はすぐに実現すると思います。使いやすいだけでなく、デザイン的にも魅力あるものであれば、おのずと一般に受け入れられていくのではないでしょうか。

5.真のユニバーサルデザインを求めて

写真4 坂本さん

長々とお付き合いいただきましたが、今回でこのセミナーは最終回となります。連載を開始した当初と比べて、今では生活の中にユニバーサルデザインが根付いてきているといえます。しかし、まだまだ改善していかなければならない点がたくさんあることも事実です。ユニバーサルデザインには、これで終わりというものがあるわけではありません。機能性だけではなく、デザインとしても洗練したものにしていくことが大切です。「これでよし」としてしまうのではなく、今後も進化しつづけていかなければなりません。

そのためにはまず今回お話したように、空間設備などのような単体をユニバーサルデザインにしていくだけでなく、住まい全体をユニバーサルデザインにしていくことが必要であると思います。生活全体をユニバーサルにしていくこと、それは一軒の家の中の話だけではなく、更には共同スペースや社会全体へと広げられてゆかなければなりません。

終わり

ものを語る 工業デザイナー さかもとてつじさん

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